第2章 “エース”を連れ戻せ
「西谷は、旭の事人一倍大事に思ってるから、頑なに戻って来ようとしないんだ・・・・俺が旭にトスを上げ続けた所為で・・・・」
スガ先輩は下唇を強く噛み締める。両腕が震えている事に気付いて視線を下にやると、拳が酷く強く握られていた。まるで今にも溢れ出そうな感情を、飲み下すかの様に。
「そんなこと、ないですよ。スガ先輩の所為じゃ・・・・何も、知らない私じゃ・・・・説得力なんてないです。けど、」
―――泣きそうなスガ先輩に何も言葉を掛けないなんて、
出来るわけがない。
「東峰先輩は、エースという立場です。だからきっと、たくさんの重圧を負っていたんだと思います。たくさんの重圧のその中にはきっと、『エースはスパイクを決めなければならない』という、自分で思い込んでしまって出来た重圧が、あったんじゃないかと、思うんです・・・・」
「・・・・」
スガ先輩は静かに私の言葉を待ってくれている。私は自身の両手をきつく握り合わせ、言葉を零す。
「だから、その試合で、スパイクを決めれなかった自分を責めている・・・・スガ先輩が上げてくれたトスを、自分は打てなかったと・・・・でも、東峰先輩も、スガ先輩も悪くないです。絶対に」