第2章 “エース”を連れ戻せ
「よっせ──────いッ!!」
砲丸の様に宙を飛ぶボールを西谷先輩は難無く打ち返す。西谷先輩はすぐ立ち上がりイエイと私にピースする。
「かっこいー……」
私はポロリと称賛を零していた。いやこれはしょうがないですよい。カッコいいんですよもう。西谷先輩にサーブを打った影山さんも瞳をキラキラさせている。
「な、なんだよ瀬戸ッ!!褒められたって嬉しいんだぞチクショウ!!瀬戸にもガリガリ君2本奢ってやるよ!!」
「あ、ありがとうございますッ」
褒められたって嬉しいんだぞにキュンとしたのは私です。
「もっかいやってやるよ瀬戸!」
「え、良いんですかっ?!」
「もちろんだ!!」
よっしゃー!!影山もっかいだ───ッ!!
西谷先輩は両腕をブンブン振って影山さんにサーブを求める。楽しそうだなぁと見詰めていると、隣に立つスガ先輩の表情が曇っている事が目に付いた。西谷先輩を見るその顔は、微笑んでいるのにどこか悲哀を湛えている。
「あ、あの、スガ先輩?」
「えっ、あ、あぁごめん!ボーッとしてた!どうした三橋?」
スガ先輩は苦笑し、照れくさそうに頬を掻いて謝罪する。悲しみを奥底に押し込める様に、スガ先輩は笑う。
「スガ先輩、どうかされたんですか?何だか、その、悲しそうに、見えて…」