第2章 “エース”を連れ戻せ
※ ※
「カッコいいよ、すっごく」
「えっ?!」
瀬戸の返答に、おれは遠慮無く驚愕する。
「カッコイイんじゃないかなー」とか、「良いと思うよー」とか、
気を遣った肯定も否定もしない答えを予想していた為、こんなハッキリとした賞賛が来るとは思っていなかった。
「へ、ホ、ホントッ?!」
「うん、ホント」
信じられなくて思わず聞き返す。瀬戸はこくりと首を縦に振る。その目は真っ直ぐにおれを見詰めて嘘じゃないと語る。
「そ、そか。カッコイイって思ってくれるのか…」
何だか嬉しくて口元が緩む。瀬戸にカッコイイって言われ、安心感が胸を満たす。お礼を言おうと思い、フッと顔を上げた。
「ッ!!」
「ひ、日向どしたの? !まさか変な顔してた?」
「い、いや、そうじゃなくて…」
――――――――瀬戸が笑った…?
瀬戸の口の端が僅かに上がっていたように見えた。
中学一年の時からの友達だが、瀬戸の笑った顔はあまり見なかったように思う。否、男子に笑い掛ける事があまり無いのだ。女子とはよく喋るし、よく笑う。男子と仲良くする事が苦手なのだと、昔瀬戸がポツリと語った事を思い出す。瀬戸が心を開いてくれるまで相当時間が掛かったなぁ…。
心を開いてくれた後も、滅多な事でもなければおれの前で笑う事はなかった。自然と瀬戸から笑みが零れる事は無かった。なのに、今、自然と笑った?
「瀬戸――!!こっちこいよー!俺のレシーブ見せてやるよー!!」
西谷さんの瀬戸を呼ぶ声にハッと意識が帰って来る。
「あ、は、はいっ!」
瀬戸は慌てて西谷さんに言葉を返す。瀬戸は再びおれに向かい合い、声をかける。
「日向も早く行こうッ」
「あ、う、うん!」
西谷さんの元に向かいながら、考えが頭を巡る。そういえば、何だが最初ここに来た時より明るく、なった?中学の時より頑張って男子と接しようとしてる感じがする。ここは良い人たちばっかり、でもないかもだけど…。主に月島とか影山とかゲフンゲフン。
――――瀬戸がここで何か変われるんだったら、おれは瀬戸の力になってあげられたら良いな。