第2章 “エース”を連れ戻せ
「えっ?!」
「かっこいいよ」
「へ、ホ、ホントッ?!」
「うん、ホント」
日向の顔がパッと明るくなる。大きな瞳が光を受けて、ビー玉の様に輝いて綺麗だ。
「そ、そか。カッコイイって思ってくれるのか…」
余程嬉しいのか、口元をもにゅもにゅと喜びが溢れ出るのを堪える様に動かす。私も何だか嬉しくなってしまう。
「ッ!!」
日向が急に目を見開いた。その理由が分からず、私もビックリドッキリである。
「ひ、日向どしたの? !まさか変な顔してた?」
「い、いや、そうじゃなくて…」
日向は困惑した声を漏らす。私は慌てて自分の口元に片手で触れる。口元は真一文字に結ばれていたが、日向が驚いた時にどんな顔をしていたかは分からない。うおおお・・・・どんな顔してたんだ自分。ネガティブモードに突入しそうになった時、
「瀬戸――!!こっちこいよー!俺のレシーブ見せてやるよー!!」
「あ、は、はいっ!」
ニコニコ笑顔の西谷先輩が大きく手を振って呼んでいた。西谷先輩の近くには田中先輩と影山さんも立っていた。特に影山さんはそわそわと肩を揺すっていて、早く西谷先輩のレシーブを見たいようだった。先輩の笑顔に慌てて返事をすると、再び日向に向き直る。
「日向も早く行こうッ」
「あ、う、うん!」
日向に声を掛け、急いで西谷先輩達の元へ向かう。後で日向にビックリの理由を聞くのを忘れないようにしないとな。ビックリの理由は分からないけど、私がカッコイイと言って喜んでくれたのは嬉しかった。日向が“囮”を誇れるようになれるまで、私はいくらでもその背中を押そう。
未来の“エース”の為に。