第7章 おかしな烏野高校排球部
「あいっちちちちッッ…!」
「す、すみません田中先輩!もう少しなので…」
「うええええすみません田中さぁ〜〜ん……!!」
消毒液を染み込ませた綿を丁寧に膝に当てる。その度にひぃひぃと引き攣った悲鳴を上げる田中先輩に、日向は涙目で謝り続ける。
事の次第を説明すると、影山さんのトスは田中先輩に向けて上げられたものだったのだが、日向は間違えたようで、そのトスに猪突猛進に突っ込んで行き、田中先輩と空中で衝突してしまったのだ。
結果、田中先輩は肩を打ち、膝を擦りむく怪我を負った。日向は後頭部を強く打ったのだが、何故かケロッとしている。石頭なのだろうか。
「日向〜そんな謝んなよ〜。ホラっ!俺全然平気だろ?後輩の可愛い突撃なんて何て事ねぇよ!!」
「だ、だな゛がざぁ〜〜ん゛!!!」
「うわっ顔汚ぇ!!鼻水付けんな!!!」
田中先輩の男前発言に、日向は涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔のまま田中先輩に抱き着く。日向分かる。今の発言はイケメン過ぎる。
「日向のボゲッッ!!どう考えたってあの時のトスお前のじゃなかったろうが!!ボゲ!!このボゲ!!」
「うるっせぇ影山!!ボゲボゲ言う方がボゲなんだからなぁ!!」
影山さんのボゲ攻撃に頭に血の昇った日向は、涙と鼻水を振り乱し猛然と彼に向かって行った。
そして毎度の如く主将とスガ先輩が呆れながら宥めに掛かる。すっかりお馴染みになった光景に苦笑すると、再び田中先輩の手当てに戻った。
「悪いな瀬戸、手間掛けちまって」
「いえ、私の仕事ですから気にしないで下さい」
そう言いながら私は田中先輩の膝にガーゼを当てる。
「動けそうですか?」
「おー平気!ちょいヒリヒリすっけど、余裕だな!」
ひょこひょこと脚を動かす田中先輩に胸を撫で下ろす。大会前に動かせなくなるなど、冗談でもやめて欲しい。
「ありがとな瀬戸!助かった!」
快活な笑顔を見せる田中先輩に自然と笑みが零れた。