第7章 おかしな烏野高校排球部
『犬猿の2人の、唯一の気の合うところは?』
* * *
ボールを打つ音とシューズが床に擦れる音が絶え間無く響くこの空間にいると、自然と肩が強張る。ここ最近は特にそれが顕著に表れた。
IH当日が最早片手で数えて事足りる程に迫り、各校のバレー部達も神経を張り詰めさせていることだろう。それはここ烏野も例外ではなく、誰もが毛を尖らせていた。
焦燥や疲れから来る苛立ちが皆から少しずつ見え始めた。それでもやはり優しい。疲れを噛み殺して私に接してくれた。月島さんは相変わらずだけれども。
ボールを必死に追う皆の姿があまりに眩しく、私はほんの少し目を細めた。
今の私が皆にしてあげられるのは、あまりを気を遣わせず、そして今まで以上に皆に尽くす事しかないだろう。がんばルンバだ。グッと一人で小さくガッツポーズをし、私はドリンク箱を抱え直した。
「ナイッサー!!」
「ナイス カバー西谷!」
「影山ーっ!そっち行ったぞー!!」
「はいっ!!」
影山さんの元にボールが届くと、そのボールは瞬く間に美しい放物線を描いて飛んで行く。そのトスを任された田中先輩が力強く飛んで応えた。
その光景にぽーっと見蕩れていると、不意に田中先輩の背後にオレンジ色の姿が現れる。
「えっ?!日向?!」
素っ頓狂な私の声に続いてコートから、「えっ?!」「ちょっ、」と戸惑う声が上がり、そして───
「「あいたぁ────ッッ??!!」」
鈍い音と共に悲鳴が生まれた。