第7章 おかしな烏野高校排球部
「……お前、ロッカーん中すげぇ汚ねぇじゃねぇか」
「え?そーお?まぁ片付け好きじゃないしね〜。岩ちゃんもよく知ってるでしょ?」
岩泉の言葉通り、及川のロッカーは物で溢れ帰っていた。シーブリーズに最新号の月刊バリボー、予備のシャツ、果ては空のペットボトル、牛乳パンと菓子の空袋が3つ4つと転がっていた。
「お前なぁ ロッカーを私物化すんなよな。あくまで学校の備品だぞ」
「はーい以後気を付けまーす」
全くー。岩ちゃんは俺のお母ちゃんデスカー?など生返事をする及川に、岩泉は嘆息する。
昔から片付けに関しては注意しても聞かず、やれと言ってもやらず、渋々自身が手伝っていた事を思い返す。
「うぃーす」
「おー。お前ら早いな〜」
お軽い挨拶で部室に入って来たのは、及川達と同じく3年生の松川一静と花巻貴大だった。気だるげな目元の松川と、どこか達観した雰囲気を持つ花巻は、青城バレー部の主軸である二人にとっても部にとっても欠かせない存在だ。
「あ!ねぇねぇまっつんマッキー!二人も部活終わった後付き合ってくんない?」
「あん?別に良いけど」
「俺も花巻と同じくぅー」
及川の言葉に目を瞬かせる花巻に続き、松川は軽く返事をすると着替えを始める。
「あっ。そうだクソ川」
「当たり前の如く最低な固有名詞で呼ばないでくれる?!」
「お前の用事に付き合うのは良いが、一体何しに行くんだよ」
岩泉の問いに及川は暫し黙るが、不意に唇をゆるりと釣り上げた。その表情に岩泉達の背筋に一瞬ゾクリと寒気が走った。それを知ってか知らずか、及川は小さく鼻歌を歌いロッカーの扉に手を掛ける。
「ふふっ。ちょーっと、」
───────バタン
「クソ可愛い後輩に“挨拶”をね」