第7章 おかしな烏野高校排球部
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「フンフンフーン♪フンヌフーン♪」
陽気に鼻歌を歌いながら部活のTシャツに腕を通すのは、青葉城西高校バレー部の主将にして頂点───及川徹である。そんな誇るべきとも言える主将に対し珍生物でも見るかのような目を向けるのは、彼の親友にして相棒、岩泉一だ。
「どうしたよクソ川。気持ち悪さがいつもの比じゃねぇぞ」
「ねぇちょっと岩ちゃんヤバいくらい酷くない?!ヤバくない?!ヤバ過ぎて俺語彙力ダダ下がりなんだけど!!」
「うるせぇクソ川だ」
「当然のようにその名詞使用しないでくれる??!!」
ギャーギャーと騒ぐ及川を横目に、岩泉はTシャツの襟元を正す。
「んで、何でそんなアホみたいに上機嫌なんだ?」
「えー、んー…んふふ〜ちょっとね〜…」
口元を緩ませながら言葉を濁す及川に、岩泉は青筋を立てるが、毎度の事なので体力の無駄な消耗を抑えるべく流す事にした。
『触らぬアホに害は無し』。それは長年及川と連れ添って来た岩泉の信条だ。
「あ、そうだ岩ちゃん。今日部活終わった後ちょっと付き合ってくれない?」
「あ?別に良いけど何すんだよ」
岩泉は脱いだYシャツを適当にまとめると、丁寧に畳んだズボンとブレザーの上に放り投げ雑にロッカーの扉を閉めた。以前畳まず放置し、派手に皺を付けて母親にこっぴどく怒られて以来ズボンとブレザーだけは綺麗に畳むようになったことを、岩泉は漠然と思い出す。