第7章 おかしな烏野高校排球部
カラカラと回転する自転車のタイヤ音が消え去り、一時の静寂が降りる。瀬戸ちゃんは振り返った。一点も曇の無い黒が広がる瞳が俺を見る。
俺は今日何度、この瞳に心の臓を射貫かれただろうか。
風が空気の中を走る。何とは無しに俺の頬を撫で、髪を踊らせた。それは、彼女にも同様に。靡く髪の合間に見える瀬戸ちゃんの顔は無表情だが、それすら俺を惹き付けて止まないのだ。
一歩、彼女に歩み寄る。
「─────また、俺と会ってくれる?」
瀬戸ちゃんは、少し驚いた様に目を見開き────只にっこりと微笑んだだけだった。
でも、それでも、それだけで俺は十分だった。
十分過ぎる程に俺は────瀬戸伊鶴にどうしようもなく惹かれたのだ。