第7章 おかしな烏野高校排球部
再度不思議そうに首を傾げる瀬戸ちゃんの姿を見ると同時に、全身の力が抜け思わずその場に座り込んでしまう。杞憂を重ね、自己嫌悪までした自分に恥ずかしさが込み上げてくる。
深い安堵と自身に対する呆れを含み、一気に溜息を吐き出した。すると、不意に瀬戸ちゃんが自転車のスタンドを立て、俺の側にしゃがみ込んで来た。
優しい匂いがふわりと微かに鼻を撫でた。クラスの女子が纏わせている香水のような煌びやかな香りとは違う、自然体で柔らかいミルクのような香り。その優しい匂いが疲れた頭を刺激し、思わずくらりとする。
「あの、本当にすみませんでした…ちゃんと待ってなくて…」
瀬戸ちゃんの表情に陰りが差す。
今日の会話を聞いていても、節々に『自分が良くなかった』『自分の所為で』等という言葉をよく聞いた。気を遣い過ぎる性質のようで、余計な責任を感じやすい子なのだろう。俺は一つ息を吐くと、膝を叩いて立ち上がった。
「ううん、ぜーんぜん。瀬戸ちゃんは悪くないよ。俺が勝手に騒いで勝手に落ち込んだだけだから」
「でも、」
「『私の所為で』って言う気でしょ。今日はもうそれ言っちゃダメだよ?瀬戸ちゃんなーんにも悪くないから」
目を丸くさせ、パチパチと瞬かせる瀬戸ちゃんの姿が、なんだか可愛らしくて思わず笑い出してしまう。それに戸惑う瀬戸ちゃんに、俺は手を差し出した。
「帰ろ?」
「……はい」
彼女も笑ってその手を取る。彼女の手は大きくて、あまりに“小さかった”。