第7章 おかしな烏野高校排球部
そこに居たのは、何事かと小首を傾げる瀬戸ちゃんだった。
オレンジ色の光を放つ街灯に照らされる彼女は、現実味の無い絵空事ような存在に映る程絵になった。
「どうしたんですか?走ってどこかに行こうとしてたみたいですけど…」
「え、あ、外出たら瀬戸ちゃんがいなくって、それで…」
「…? あっ、それはこれを取りに行ってたからだと」
そういうと、瀬戸ちゃんは手元に視線を移した。そこには白をベースにした自転車がすんと佇んでいた。磨り減ったペダルや所々の黒墨を見ると、相当使い込まれている事が伺い知れた。
「お店の裏手の方に停めてたんですけど、それがいけなかったのか蜘蛛がサドルに乗ってて……。
私 蜘蛛だけはどうしてもダメで、追い払うのに凄く時間がかかってしまって、待たせてしまってすみませんでした…」
つまり、瀬戸ちゃんは蜘蛛と店の裏手で格闘していて、俺はそれに気付かず彼女を探して駆けずり回っていたということになる。アホの如く。
事の真相を知り、肩の力が抜ける。スポーツバッグの肩紐もずるりと落ちた。