第7章 おかしな烏野高校排球部
「あの……」
「ん、んっああごめん!何?」
おずおずと声をかけて来た瀬戸ちゃんに、ボーッとしていた俺は慌てて向き直る。
「その、どうして私なんかを、お茶に?」
「えっ?」
予想外の言葉に思わず間抜けな声が零れる。猜疑心に満ちた彼女の視線が注がれる。
「まだ、理由を聞いていないです」
「えっ、そっそれは怪我したところを助けて貰ったじゃん!そのお礼がしたくて!」
「そんな…それ程の事は……」
瀬戸ちゃんは目を伏せ、戸惑い気味に横髪を掻き上げる。サラリと柔らかな髪が形の良い耳に掛かった。
よく見掛けるその所作。普段なら何とも思わない筈なのに、彼女がしたその瞬間何故だか胸が高鳴った。動揺を噛み殺し、慌てて平静を取り繕う。
「せっかく、頼んだからさ!良かったら食べてよ!ね?」
テーブルに並べられているのはフォンダンショコラ、クリームがたっぷり乗ったミルクレープ等だ。瀬戸ちゃんが注文を遠慮した為、俺の独断で注文した物だが、美味しいのは確かだ。
「……」
彼女は憂心に満ちた表情で俺の顔を一瞥するが、やがて決意したように唇を引き結んだ。ゆっくりと手を伸ばし、フォークを手に取った。