第2章 “エース”を連れ戻せ
かっこいい──────ッ!!
「カッコイイッ!!」
日向の声と私の心の声が被る。いや本当マジでかっこいいです西谷先輩。
「!!! バッ、バッカヤロウ!そんなハッキリ言うんじゃねーよ!んニャロー!ガリガリ君2本食うか!!」
「オス!」
「ソーダ味とナシ味な!」
「オス!」
コントか。今日会ったばかりなのに日向と西谷先輩はもう仲良くなっている。日向のコミュ力の高さにはホントに驚かされる。
「で、お前の特技は?“エース志望”」
「えっ」
「レシーブはへったくそだしな」
「うっ…」
先輩もっと言葉をオブラートに包んでください。
「なんかあんだろ」
「お…とり……」
「あ?鳥?」
「おっ、囮…」
───囮。
日向は何故かその言葉を力無く呟いた。西谷先輩もその事が引っ掛かったようで眉を顰める。
「? なんでそんな自信無さげに言うんだ」
日向はまるで所在が無いかのように間を空け、控えめな声量で答えを吐く。
「『エース!』とか、『守護神!』とか、『司令塔!』とかと比べて、なんかパッとしないっていうか・・・」
「呼び方なんて関係無ぇだろ」
「でも・・・」
唇を尖らせ、子供の様に渋る日向に、西谷先輩は澄んだ瞳を向けて諭し始める。
「お前の囮のお陰で誰かのスパイクが決まるなら、お前のポジションだって重要さは変わんねぇんだよ。『エース』とも、『守護神』とも、『司令塔』ともな」
その通りだった。あの青葉城西との練習試合、たった一度の試合を見ただけだったが、日向の役割の重要さは痛い程感じられた。青城の選手達は、“日向”という存在に翻弄され、手も足も出ない状態だった。
あの姿は、まさに“囮”だ。