第2章 “エース”を連れ戻せ
「───けどよ」
西谷先輩の神妙な声音に、自然と先輩に目が動いた。先輩は誇らしげな表情を浮かべ浪々と語る。
「試合中、会場が一番“ワッ”と盛り上がるのは、どんなすげえスパイクより、スーパーレシーブが出た時だぜ」
西谷先輩の澄んだ瞳は凛として日向を見詰める。日向も吸い寄せられる様に見詰め返していた。
「高さ勝負のバレーボールで、リベロは小っちぇ選手が生き残る唯一のポジションなのかもしんねえ。けど、俺はこの身長だからリベロやってるワケじゃねえ」
西谷先輩の瞳は揺るがない。その瞳は嘘じゃないと確信させるには十分過ぎる力を孕んでいた。月島さんですら黙って彼に視線を寄せている。
「たとえ身長が2mあったって、俺はリベロをやる。
スパイクが打てなくても、ブロックができなくても、ボールが落ちさえしなければ、バレーボールは負けない。そんでそれが一番できるのは────」
西谷先輩は口角も引き上げ、誇らしげに笑みを浮かべる。
右の拳をゆっくりと胸へ捧げた。
「リベロだ」
!! か、か、か・・・!!