第7章 おかしな烏野高校排球部
彼女は驚いた様に目を見開くと、大きな瞳が俺を見詰める。その目がまるで光が差した黒雲母の様で思わず視線が吸い寄せられる。
「ほら、俺のジャージ。わかんない?」
俺は彼女に自分の身に纏うジャージをちょいと摘んでみせた。彼女はじっと俺のジャージを見詰め、考え込むようにほんの少し眉を顰めた。
「!もしかして、青城……?!」
「そう! 自己紹介、まだだったよね?遅くなっちゃったけど、俺、青葉城西高校バレー部3年主将の及川徹!よろしくね」
「わ、私は烏野1年でマネージャーの瀬戸伊鶴です。こちらこそ、よろしくお願いします……」
瀬戸伊鶴。
その名前が幾度も自分の中で反芻される。やっと知る事が出来た彼女の名前を、焼き付けるかの様に。幾度も幾度も繰りした。
「瀬戸ちゃんかーよろしくね。あっ、主将だからって緊張しなくて良いからね!」
沈黙を作り彼女に妙な気を遣わせまいと、舌を無理にでも動かす。
いつもの他の女の子とのお茶だったら、スラスラと言葉が滑り出る筈なのに。何故かこっちが緊張してしまう。
「は、はいっ、ありがとうございます。 ……あ、あの」
「ん?なあに?」
「わ、私の記憶違いだったらすみません。あの、その…」
彼女は落ち着かないのか、自分の耳たぶを触りながら不安気に口を開く。
「お、及川さん、て……練習試合の時、遅れて来た方、ですか?」
彼女の言葉に思考が止まり、顔が引き攣った。
まさか、それが出てくるとは。
「えっ、ああ…ああ~~~……」
「あっあっ、ちっ、違いましたか!?」
「あー、いや合ってるんだよ?合ってるんだけどさ~~~……」