第7章 おかしな烏野高校排球部
「────ね、ねえ!」
「! はっ、はい?」
彼女の肩がビクリと跳ねる。不安気に揺れる瞳が俺を見据える。
──────良かった、動いた。
ホッと安堵感が胸中に広がる。
何故か俺は彼女が動かないのではないかと馬鹿馬鹿しくも、本気でそう思ってしまった。明確な理由は分からないが、彼女の持つ、蜃気楼の様な、曖昧で掴み所の無い雰囲気のせいなのだろうか。
「あの、何か?」
「えっ?あっあー、そのー……」
俺は言葉を詰まらせた。
突発的に声を掛けただけで、何を話そうか等全く考えていなかった。彼女の訝しむ視線が容赦無く突き刺さる。痛い、とても痛い。
ぐるぐるとフル回転する頭は、無理矢理言葉を絞り出した。
「あっ、あの!あなた、……あーいや、君のそのジャージって、烏野高校の男バレのだよね?君、マネージャー?」
「えっ、あっ…は、はい」
彼女の表情はポカンとしたものに変わった。唐突にそこを突かれ、驚いてしまったようだ。それと、突然敬語を外し砕けた話し方をしたせいもあるだろう。
とにかく距離を縮めたくて、“普段通り”を心掛けて話しかける。
「やっぱり!そうだよね!そっかー烏野のねー。あれ?でも青城との練習試合の時にはいなかったよね?その後に入ったの?」
「あ、はい。あの試合を見て入ろうと思っ……何で、私がいなかったの、知ってるんですか?」