第7章 おかしな烏野高校排球部
不意に彼女は窓に視線を投げる。そのままじっと動かなくなった彼女は、まるで精巧な人形のように映った。
射干玉(ぬばたま)のように黒く、艶々と光を反射する髪が華奢な肩にかかっている。
厚い唇にはリップクリームが塗られているのか、ほんの少し紅く色付いている。頬は丸みを帯びていて、触れば餅の様に柔らかいのだろうか。
健康的な白さを持つ顔には、潤んだ黒い瞳と整った形の良い眉が嵌められている。猫の様な目尻がどこか危うい魅力を放ち、それと同時に長い睫毛が儚さを醸し出している。
彼女の纏う雰囲気は────ナイフの刃先であると同時に、触れば溶けてしまう氷のような、落とせば直ぐに壊れてしまう、脆く美しい硝子の如き鋭い物の様に感じる。
─────ふと、彼女がこのまま、二度と動かないのではないかと思った。
このまま、人形のように。
石像のように。
絵画のように。
次の瞬間、悪寒が背筋を駆け抜け、勝手に口が動き出していた。