第7章 おかしな烏野高校排球部
「あの」
「あ、はいっ」
声をかけると、彼女は少し驚いたように慌てて顔を上げる。彼女は戸惑いを滲ませながらも、俺の目を不安げに見詰める。やっと彼女と目が合って安堵した。
「こういう所は初めてですか?」
「えっ?」
「何だか落ち着かないみたいでしたから」
「あ、すみません…その、このお店、知ってはいたんですけど、入るのは初めてで……」
今にも風に攫われてしまいそうな儚い声が耳を通る。やっと合った目を逸らされてしまった。
「ここ美味しいんですよ、評判も良いですし」
そうなんですか。と彼女は小さく答えると、また俯いてしまう。彼女の俺に対する警戒心の強さに、正直俺は少し困惑を覚える。
前の事とはいえ、俺と彼女は顔見知りだ。その時も、彼女は大人しく、俺に対して警戒の念はあっただろう。
しかし、今の彼女はまるで初めて会った相手を前にしているかのように心を閉ざしている。その変貌ぶりに、心の隅に穴が開いたような感覚が産まれた。