第7章 おかしな烏野高校排球部
鴨一兄さんの言葉に思わず素っ頓狂な声が漏れる。驚きの余り静止してしまうと、兄さんの目がスッと細まる。
「……誰に貰ったの?」
「そ、それ、は…」
何故か私は口籠もってしまう。一言『影山さんから貰った』と言えば良いのに。それなのに、
「秘密」
私は、言わなかった。
そのまま言い逃げるように二階にある自分の部屋へと走って行く。
どうして言わなかったのか。
“恥ずかしい”? 違う。
“からかわれそうだから”? 違う。
あの時の、影山さんの少し照れた顔、ぶっきらぼうな言葉。恥ずかしそうに鼻の頭を掻く仕草。その一つ一つの記憶を、
───────私の、私だけのものにしておきたい。
知っているのは私だけで良い。
そう思っただけ。ただ、それだけ。