第7章 おかしな烏野高校排球部
* * *
「ただいまー」
「あ、お帰りなさいツル」
疲労した体を引きずりながら台所に入る。私に笑顔を向けると、母さんは食事の用意を再開する。
食欲を唆る良い匂いが鼻腔を擽る。湯気の立つ温かい夕食がテーブルに並んでいる。今日はコロッケらしい。めちゃくちゃお腹鳴ってるよ。
「伊鶴お疲れー」
「鴨一兄さん。ただいま」
きゅうりの漬け物を摘みながら労いの声を掛けてきた鴨一兄さんは、すでに食卓に着き、一人食事を始めていた。いつもならば先に食べず私の帰宅を待っていてくれてるのだが、今日は黙々と箸を進めている。
「あ。兄さん今日バイトだったんだっけ?」
「ん。今日は夜間の工事現場の交通整理」
兄さんは残り一欠片のコロッケを口に放り込むと、陶器を鳴らしながら白米を勢い良く掻き込んだ。
ゴクリと飲み込むと親指で口の端を指で拭った。こういうトコ妙に男らしいんだよな。無駄に。
「8時からでちょっと現場が遠いからイヤなんだよね~…酔っ払いとか絡んでくるのホント困るし、…あれ?伊鶴そのキーホルダー今まで付けてたっけ?」
「えっ?」
不意に兄さんが私の鞄を指差す。その指のしめす方向は、あの雛ガラスぬいぐるみだった。
「ああ、コレ貰ったの」
「へ~……誰に?」
「えっ」