第7章 おかしな烏野高校排球部
袋を開き、ゆっくり中に手を入れる。すると、ふかふかした感覚を指先で感じる。少し小ぶりなそれを取り出した。
「カラス、の、ぬいぐるみ…?」
私の掌に収まっていたのは、雛ガラスの小さなぬいぐるみだった。眉が釣りあがり、ちょっと目付きの鋭い顔付きである。頭頂部にはチェーンが通されて、鞄などにも付けられるようだ。
──────何だか、ちょっと影山さんに似てるな……
一旦そう感じてしまうと、手の中の雛ガラスが影山さんにしか見えなくなってしまう。雛ガラスなった影山さんがぴよぴよ言っている姿を想像するとフッと笑いが込み上げてきて、慌てて口元を押さえる。
「お、おいっも、もしかして、気に入らなかったのか?」
「えっ、ち、違いますよ!こ、これは、その…」
あらぬ誤解を弁明しようとするが、不思議と笑いは止まらず、俯いてまた小さく笑い始めてしまう。
この雛ガラスぬいぐるみの様に、ブスッとした表情で、「ん、んだよっ、何笑ってんですかコラ」と呟く影山さんに、また頬が綻ぶ。
───きっと、何を贈ろうか一生懸命考えて選んでくれたのだろう。私に渡すのも、きっと勇気を振り絞ってくれたのだろう。
そう思うと、嬉しくて、堪らなかった。
「影山さん」
顔を上げ、いつもの様に、唇を尖らせている影山さんにを見詰める。
「────ありがとうございます。凄く、凄く嬉しいです」
「!!」
不器用な優しさの一つ一つが胸を擽る。そして、同時に私の心の奥底から湧き上がる未知の熱い感情。
それだけは、まだ分からない。