第7章 おかしな烏野高校排球部
何やかんやでプレゼント候補が2つになった。
1つは、私の選んだ刺繍の施されたアジアンテイストのポーチ。
そしてもう1つは影山さんの選んだマグカップだ。どうやらハンドメイドのようでゴッホのような抽象画が、色鮮やかに描かれている物だ。
「どっちにしますか?」
「……」
「影山さん?」
彼は手にしている2つの商品をまじまじと見詰めてボソリと呟く。
「どっちも、買う」
「えっ」
影山さんの言葉に思わず目を見開く。どちらも買うという選択肢が頭の中に無く、拍子抜けしてしまう。
影山さんの透き通った横顔を見詰めていると、彼はこちらに澄んだ綺麗な目を向ける。
「瀬戸が選んでくれたから」
その言葉に、私は一瞬で顔が熱くなる。何を言えば良いのか分からなくなり、「あ、えっ、と」等と要領を得ない単語しか出てこなかった。
影山さんは私の反応に疑問符を浮かべるも、スタスタとレジに商品を持って行った。
素なのか狙って言ったのか……影山さんならば素で言ったのだろうな。
影山さんの天然ぶりを改めて恐ろしく感じた今日であった。
* * *
「今日は、本当にありがとな」
「いえ、こちらこそお手伝いさせて頂いてありがとうございました」
デパートを出て、影山さんと向き合い、お互いお礼を言い合う。
影山さんの手には綺麗にラッピングされたプレゼントが沈黙している。装飾されたリボンが夜風に揺らされた。
「喜んでもらえると良いですね」
そう言うと、影山さんは私の目をじっと見詰める。
「瀬戸が選んでくれたから、絶対喜ぶに決まってんだろ」
「!!」
また顔が熱くなる。この人の言葉に嘘は無いと分かってしまうから。
「送らなくて平気か?」
「あ、は、はいっ。大丈夫です、ありがとうございます」
私の言葉に、影山さんは少し憂色を見せるが軽く頷く。
「そうか……気を付けて帰れよ」
「はい、じゃあ…また明日」
「おう」
歩き出した影山さんの背を見送る。ぴんと凛々しく伸びた背筋は後ろからでもよく分かった。
そしてその背に、軽く手を振った。