第7章 おかしな烏野高校排球部
歩き慣れた筈の廊下が、何故か全く違う景色に感じる。校庭で活動している運動部の掛け声すら初めて聞く物に感じられた。
不思議な程静まり返った校舎には、私と影山さんの足音のみが響いている。そんな静かな校舎に、バクバクと脈を打つ自身の心臓の音が漏れ出 しそうで、余計に顔が熱くなる。緊張し過ぎて心臓痛い。
「なあ」
「はっ、はい」
「瀬戸は今日部活終わった後、時間あるか?」
「え、あ、ありますけど…」
影山さんは頬を掻いて、もごもごと口を動かす。
「その、実は明日、母さんの誕生日なんだよ。でも俺、何あげたら良いとか、そういうのよくわかんねぇんから…それで、」
「一緒に、選ぶの手伝って欲しい…です……」
「は、はいっ…よ、喜んで……」
一瞬顔を見合わせるが、すぐにそそくさと逸らしてしまう。しかし、僅かの間だが見えた影山さんの顔は────鮮やかな林檎の様に真っ赤に染まっていた。
* * *
心の乱れが表れ易い人っていますよね。
私はそこそこ表れ易い人間だと思います。まあ中の上ですって言える程度には表れ易いです。 ────────しかし、彼ほどではないと断言しよう。
「大地さん…何か今日の影山、変じゃないスか?」
「あ、ああ。変、というか…何というか…」
─────────ガンッ!!
「いッッッ!!」
「う、上の空??」
主将、まさしくそれだ。
「大丈夫か影山!?ちょ、頭見せてみろ!!」
「す、すいません。で、でも大丈夫っス」
壁に後頭部を思い切りぶつけた影山さんに、スガ先輩はすぐさま駆け寄った。影山さんは落としたドリンクを拾い、スガ先輩を宥めようとするが、スガ先輩はクワっと厳しい表情を示す。
「んなわけないだろっ!物凄い音したべ!!早く見せなさいッ!!瀬戸!!悪いけど救急箱持ってきてくれ!!」
「はっ、はい!!」