第7章 おかしな烏野高校排球部
一頻り吸い終えた後、エンジンをかけて車を発進させ烏野高校から出る。気だるげな瞳を前方に投げ掛け、それとなく運転を続ける。口咥えた煙草の副流煙はふわふわと車内を漂う。
信号の姿が現れて目を向けると、かちっと赤へと変化する。軽く「あーあ」と呟くとブレーキを踏み込む。左手で煙草を摘まみ口から外す。息を吐くと一気に濁った煙が吹き出てくる。意思を持った生き物のように空間を這いずる煙を鴨一はじっと見詰めながら、漠然と先刻の出来事を思い返す。
影山との対峙。それはまるで獣同士の睨み合い。
あれはまるで、蛇に睨まれた蛙どころか、
「─────鴉に睨まれた蛇」
馬鹿らしい、と自身の発言を一蹴すると携帯用灰皿に煙草を押し付ける。
頭に作り上げた“烏野男子バレー部”の相関図を広げる。人名と、その人物の事を細かに書き留めた文字の羅列の中に、
──────『影山飛雄』の名前を探し出す。
「飛雄くん、よく覚えておきなよ」
その名前に、まだ火の燻る煙草を押し付ける。
「────兄ちゃんってのは最強なんだぞ」