第7章 おかしな烏野高校排球部
『兄(あに)とは:妹伊鶴にとっての未知の存在である』
* * *
「あ。兄さん帰りました?」
「…えっ、あ、ああ!帰ったぞ。お疲れ二人とも」
「? ありがとうございます」
主将の労いの言葉に感謝を述べるが、主将に動揺の色が浮かんでいることに気付く。何かあったのかと周囲に目を向けると、皆も主将と同様に様子が変であった。
揃って気難しい表情を浮かべて沈思している。もしやと嫌な予感に駆られ、冷や汗が流れるのと同時に腹の内がぐずりと疼く。
「あの…もしかして鴨一兄さん、変なことでも言いました?」
「えっ!?ああ、いや~その~~…」
「やっぱりそうでしたか…」
「こら旭っ!!お前何でそんな隠すのが下手なんだ!!」
スガ先輩が東峰先輩に向かってぎゃんぎゃんと叱りつける。いやスガ先輩、東峰先輩を怒らないだけて。悪いのは兄さんだから。
「すみません皆さん…兄さんが失礼なことを、」
「いや大丈夫だ瀬戸!鴨一さんそんな変なこと言ってたわけじゃないぞ?ただ難しいことというか…」
「意味深?」
「そうそうそんな感じだ!」
主将の欠けた言葉をスガ先輩が埋め、完全となった言葉に納得いくように二人はうんうんと頷く。対する私は思わず顔を顰めてしまう。
「意味深…ですか?一体兄さんは何を、」
「あーいやいやいや!!ホントに変な事じゃないから安心してくれ瀬戸!!大丈夫だから!!なっ、お前ら?!」
スガ先輩はいつもの温かな笑顔を浮かべつつも、汗をダラダラと流しており、必死の形相で他の皆に同意を求める。みんなも首が千切れんばかりに縦に振る。