第7章 おかしな烏野高校排球部
もー落ち着けって言ってるだろー!と再び怒るスガママ先輩。それを眺めながら、隣に立つ奴は愉快そうに肩を揺らす。
「面白い子たちだねぇ。ねぇ、伊鶴が部活終わるまでここに居て良い?」
「良くない。帰れ」
まるで名案でも閃いたかのように手をポンと打って問い掛けてきた。その提案を即一蹴するが、花が咲いたような眩い笑顔が引っ込む事はなかった。
「うーん残念だなぁ。でも良いの?俺居るともれなく車で帰れちゃうぞ?」
「いらん。ていうか良いから帰れ。私自転車だし必要ない」
「あそっか。こりゃあ失念だ」
わははと淡白な笑いを上げる。言葉の表面とは裏腹に、言葉に籠った感情は微塵も残念がっていない。常に笑顔を浮かべているコイツの真意の根底の部分は、私も全くと断言して良い程知らない。それがコイツに対する不快感の要因の一つでもあるのだろう。
「ねーねー。そろそろ皆の名前教えてくれなーい?」
口元に手を添え、奴が皆に向かって呼びかける。唐突な行動と発言の内容に思わずギョッとする。ていうかその口元に手添えるのやめろ。お前がやると腹立つ。
「あ、ああ!すみません!おい、お前らもう喧嘩やめろ!」
そんな野郎に対し、主将はハッとしたようにすぐさま皆を整列させようとした。紳士と言わずにいられない。奴もよく紳士とか言われてるけど私はそんな風には思わん。寧ろ詐欺師とかだろ。怪しさ120%どころじゃない奴の発言は右から左が一番である。
「あ、あ、良いんですよ主将こんな奴の言うこと聞かなくて!」
「えーちょっとぉー。お兄ちゃんをこんな奴呼ばわりってヒドクなーい?」
「ヒドクない。ていうかもう帰れホント。兄さんバイト抜けて来たんでしょ?」
「え?!バイト抜けて来たんですか?!」
余計あわあわする主将を、大丈夫ですよコイツと私の責任ですからと宥める。元はといえば弁当を忘れた私の所為だ。そしてバイトに関しては余計に油を売っているコイツの自己責任だ。