第1章 瞳の先
影山さんの言葉の意図を理解することが出来なかった。何故そんなことを言うのかと、眼前の彼を見る。
「え、あの、何で、ですか……?」
「そ、それ、は……」
言葉を詰まらせ数秒停止すると、次第に影山さんの目付きが悪化していく。瞬く間に眉根に深い皺が刻まれ、目はハシビロコウよろしく強烈に吊りあがっている。その様子に、思わず肩が撥ねる。ついでに心臓も撥ねた。
再びガッと目を見開き、苦渋の様子で影山さんは声を絞り出す。
「 ムカつくから、デス 」
「ず、ズミ゛バゼン……」
何でかは分からないが、謝るしかない事は凄く分かった。
「お────い!!影山──!!何してんだー!!さっさと来───い!!」
不意に、西谷先輩の呼び掛ける声が響く。その声により、2人の空間が消え去る。それと同時に、影山さんは我に返った様に、普段の顔付きを取り戻す。
すると、途端に何か言いたげに、口元をもごもごさせ始める。
「やっぱり、何でも無いッ!」
「え、えぇッ?」
影山さんは突然そう言い放つと、西谷先輩の元へと走る。そして後には状況の飲み込めない私だけが残される。
一体、何だったんだ……今の……。