第1章 瞳の先
と、いうことがあったのデス。月島さん、影山さんレベルで怖い。どうしようもうどうしよう。
これは私の豆腐メンタルが速攻死亡警報を唱えている。月島さん私の事嫌いなんじゃないかと思えてきた…。
「どうした瀬戸?何か顔真っ青だぞ」
「えっ、いえ、大丈夫です!」
「そうか?無理だけはしないでくれよ、辛かったら遠慮しないで言ってくれな?」
主将の優しさで何か視界が曇ってきた。もう心に染みてきて痛いくらいだわ。
「あれが烏野の“守護神”かぁ!格好良いねぇ!」
左に立つ武田先生が笑顔の華を浮かべて西谷先輩を褒め称える。先生の笑顔見てると何か心が洗われる。私の癒しポイントになりぞコレは。
「ね!瀬戸さんもそう思わないっ?」
「へっ?」
先生の急な振りに完全に死角を突かれた私は間抜けな声が出る。クソ、中々やるな先生…だがそんな事で私はやられないからな!
「あ、はい!私もそう思います」
「そうだよねー!瀬戸さんもそう思うよねー!」
ニコニコと笑う先生は何だか人懐っこい中型犬を連想させる。つまり可愛い。
と、不意に陰りが差し、何だろうと反射的にその方向を見る。
すると、いつの間にか影山さんが眉根を寄せ、不愉快そうな表情で佇んでいた。突然のことに喉がヒュッとする感覚が走る。
「な、な…」
「おい……」
あまりの恐怖に口からは「ヒャイ……」と雀よりもか細い声しか出なかった。これが精一杯。
影山さんはカッと目を見開き、ゆるりと口を開く。ヤバい、激おこでいらっしゃる。何故だ。私何かしてしまっただろうか。考えても答えなぞ出ない。お母さんごめん。どうやら私はここまでのようだ。死を覚悟し、ギュと目を瞑った。
「……あんまり西谷さんのこと、カッコいいって言うな。」
「……へ……?」
藪から棒な言葉に思わず間抜けな声が漏れる。目の前の彼とその言葉があまりにも結び付かず、静止状態となる。