第1章 瞳の先
「ふ、二人とも、落ち着いて!」
私の制止は時すでに遅し。目の前の彼───改め影山さんは日向の頭上に拳を振り下ろしており、鈍い音が響いた。
「~~~~~~ッッ!!!」
日向は大きな瞳に涙を浮かべ、頭を押さえてしゃがんでしまう。影山さんは怒りが発散しきれてないのか獣の様に唸っている。
「ひ、日向…」
「や、やっほー瀬戸…」
「う、うん、大丈夫…?」
「いや、うん…結構ツラい」
「ふん、馬鹿デカい声出したお前が悪い」
痛みに呻く日向を影山さんは鼻を鳴らして批判した。ワア影山サンコワイ。日向はムウッとした表情して、頭を擦りながら立ち上がる。
「いっ────だッ!それより瀬戸!どうしてここに来たんだよ!」
「あ、それはここにマネージャーとして入部しに来たの」
「えぇっ?!何でだよ!どうして女子の方で選手として入部しないんだよ!」
日向は困惑した表情で問いかける。私は少しだけ足元に視線を落とし、すぐ日向へ瞳を戻す。
「マネージャーやってみたかったの」
「え、で、でも、」
「おい日向ぁ!次は邪魔すんじゃねぇぞぉッ!」
興味が失せたのか、私達に背を向けて言い放った。片手に持ったボールを宙に跳ねさせながらコートへ向かった。そんな姿も絵になってしまうから不思議だ。
「あ、あぁ、分かった!」
日向は離れた影山さんに配慮して大きな声で答えた。日向は私に再度大きな目を向ける。私も日向を見ようとするが、何だか心を見透かされるような気持ちになり、違う所を見てしまう。日向の純粋な瞳が痛かった。