第7章 おかしな烏野高校排球部
ガーゼを慎重に傷口に当てる。彼の足首付近を軽く掴み、不安定なガーゼを支える。そのまま空いた右手で包帯を取ると、ガーゼの上に巻き付けていく。
その際、私は何気無くちらりと彼を見上げる。彼は私が包帯を巻き付けていくのをじっと見詰めていた。その少し顔を伏せた彼の姿に思わず息を飲む。
健康的に日焼けした肌は瑞々しく潤っている。地毛なのだろうか艶めいた茶髪の髪は、斜めに流れており、ふわりとした雲のような印象を受ける。
そして一番目を惹くのは、完璧に整った顔立ちである。すっきりとした鼻の形と、つやりと綺麗な桜色の唇。澄んだ大きな瞳が眼孔の中に収まっている。その瞳に見詰められれば、世の中の女性達は皆揃って惹き付けられるだろう。
うん、所謂『イケメン』ってやつだね。わお。
少し目を伏せた姿がここまで絵になる人って早々居ないだろう。しかもジャージなのに。しかもジャージなのに。ジャージなのに!!
某大手メーカーの市販のジャージである。私も色違いの持ってるよこれ。
一人であれこれ考えつつ、包帯を巻きつけ終わる。ウエストポーチから糸切り鋏を取り出す。服から解れた糸がでろんと出ちゃった時とかも超便利だよね。
糸切り鋏で包帯を切り裂いていく。残った包帯とその他買って来た物をレジ袋の中へと放り込む。包帯の端を結びつけ固定する。
「終わりました。もう大丈夫です」
「ありがとうございます!助かりました!」
彼は華やかな笑顔を浮かべてお礼を言ってくれた。
しかし、私は素直にその笑顔を受け取る事は出来なかった。
最初の時程では無いが、やはり彼の笑顔はあの時の彼に似ている。
初めて会った時の、黒尾さんの笑顔に。