第7章 おかしな烏野高校排球部
「それより、その、足の方は……」
聞き返すと、彼は眉尻を下げて苦笑を浮かべる。それはまるで、自身の怪我の認知を拒むかのように感じられた。何の根拠も無い考えだが、先程私が怪我の様子を見ようとした時の反応も頷ける。いやホントに根拠ねぇな。
しかし彼の怪我の手当てをするには、私はその根の葉も無い考えに縋るしかない。
「あの……」
「はい、どうされました?」
彼は完璧な笑顔を作り上げると、愛想良く返事をする。しかしその返事の内容は、どこか先程の私の問いを無かった事にしようとしているように感じ取れる。しかしそんな事に屈するわけにいかなかった。
「その足の怪我、認めたく、ないんですか?」
ビシリと彼の笑顔に亀裂が走る。ゆっくりと彼の顔から笑顔が剥がれ落ちていく。後に残ったのは驚愕と絶望に似た感情が入り混じった表情だけだった。
「何で、そんな……」
想像以上の反応を見せ、愕然と呟く彼に戸惑うが、私は彼に口を開く。