第7章 おかしな烏野高校排球部
「もしかして、怪我……?」
その可能性が脳内に浮上し、胸がざわつく。
何かすべきだろうかと駆け寄ろうとするが、彼は知らない人で、しかも男である事に踏み止まる。要らないお節介だと思われてしまうことに躊躇をしてしまう。
しかし、もし私の予想通りであれば、私は怪我人をしている人を見捨てた人間になってしまう。それだけは嫌だという意思が私を動かした。
走って先程の彼の元に戻る。すると、そこには予想通り脚を抱えて苦しんでいる彼が居た。一度踏み止まってしまった私を嫌悪する。私は急いで彼に声をかける。
「あ、あのっ!」
「つつっ・・・!あ、はいっ」
彼は足の痛みに呻きながらも、私の声に応えて私を見る。
「ああ!さっきお会いしたお姉さんですね!どうかしましたか?」
彼は明るい笑みで私に応えた。その笑顔に、私は既視感を覚える。心の片隅でもやりとするが、それを殺して問いに答える。
「あの、突然すみません」
「いえいえお構いなく。どうしました?」
「その、あの……足、怪我されたんですか?」
「へっ?あ、ああ!気付かれたんですか?アハハ、恥ずかしいなぁ」
彼は照れ臭そうに後頭部を掻く。その表情に、殺した筈の心のもやが再び動き出す。
彼のその、取り繕った笑みに。