第6章 手に手をとって
突如黒尾の携帯から軽快な音が鳴る。
「!」
黒尾は弾かれた様にすぐさま携帯を開く。そこには新着メールが届いたことを報告する表示が浮かんでいた。もどかしい気持ちを抑えながら指を操作し、受信トレイを開く。そこには待望の伊鶴からのメールが届いていた。言い表せない嬉しさが黒尾を満たし、口元が緩みかける。
そんな黒尾に対し、黒尾の手元を覗き込み呆れを滲ませた研磨はぴしゃりと言い放つ。
「にやにやしてないでさっさと読みなよ」
「わ、わーっとるわい!」
気恥ずかしさに頬を熱くさせる黒尾はカコッと決定ボタンを押す。
パッと画面が切り替わり、伊鶴から送信された文字が綴られる。
『件名:Re:やっほー黒尾さんでーす( ̄▽ ̄)V
本文:何気女子力高いメールですね。顔文字の使い方を心得てる辺りが特に。へし折った割り箸鼻に突っ込んでやりたいと思いました』
「「………」」
二人は画面を見詰めたまま静止する。
研磨はちらりと横を見やると、何とも言えない顔で画面を見詰める黒尾の横顔と出会う。研磨は苦渋の末絞りだした言葉を投げかける。
「きっと瀬戸はさ、ほら、教養豊かですねって言いたかったんだよ…」
「……ありがと研磨。優しいなお前」