第6章 手に手をとって
「──────!」
自身の期待していた通りの人物、瀬戸伊鶴からのメールに、黒尾の心臓は堰を切ったようにバクバクと煩く脈を打つ。携帯画面を見詰めたまま静止する黒尾を気付き、研磨は背伸びをしその手元を覗き込もうとする。
「どうかしたの?」
「はうあっ!!」
突然声を掛けられたことにより、黒尾は肩をビクリと震わせた。研磨は少し唇を尖らせて不服そうに呟く。
「見えない…」
「あ、ああ悪い。ホラよ」
黒尾は研磨に携帯を渡す。研磨はそれを受け取ると、表示されてる画面をジッと見詰める。無言の研磨にもどかしさを感じる黒尾は後頭部を軽く掻く。数秒後、研磨は静かに感想を述べる。
「何か、瀬戸っぽいメールだね」
「へ?そうか?」
「うん。几帳面な感じが」
「あ~~確かにな。届きましたかってトコとか」
何となく黒尾の脳裏に画面と睨めっこをしながら文字を打つ伊鶴の姿が想像され、ふっと頬を綻ばせてしまう。
「ハイ。とりあえず瀬戸登録して返事送ってあげな」
「おおう。任せとけい」
研磨のアドバイス通りに、伊鶴のメールアドレスを登録する。そしてそのまま先程送られてきたメールに対する返事をカコカコと打ち込んでいく。
『件名:やっほー黒尾さんでーす( ̄▽ ̄)V
本文:お前のメルアド登録もしといたかんなー
寂しくなったいつでもメールしてくれて良い
からな(●ↀωↀ●)✧』
「………なぁ、研磨よ」
「何?」
ぱっと研磨が顔上げたと同時に、黒尾の携帯画面が眼前にズビシと突きつけられる。
「ねぇ!これで良いかな?!ガツガツとかしてないよな?!爽やか黒尾さんかなコレ!?」
「とりあえず本人よりはウザくないと思うよていうか近い近い近いッ」