第6章 手に手をとって
「俺から見たら、ね。さっきからポッーとして…瀬戸のこと考えてたんでしょ」
「そ、ソンナバカナ!!」
「棒読みだよクロ」
真剣にはぐらかす気があるのかも疑わしい黒尾の返答に、研磨は嘆息しジャージのズボンのポケットに両手を突っ込む。
「男のメルアドの初めてが自分ってだけで浮かれ過ぎ」
「す、すんませんした…」
「意外とクロって単純なとこあるよね」
「ギャップ萌えしちゃう?」
「エーウケるー」
「棒読みだよ研磨……」
改札を抜け、新幹線を待つホームへと到着する。疲れを滲ませるサラリーマンや、気だるげな瞳でどこかを見詰める女性などが黒尾達と同様に新幹線を待っていた。薄暗い空間にいる中そんな彼らを目にし、黒尾は少し息の詰まる感覚を覚えた。
隣に立つ研磨を見習い自分も携帯を弄ろうかと黒いエナメルバッグの中身を探り、携帯を取り出す。
パカリと携帯画面を開くと、一通の新着メールが届いていた。半ば機械的に手を動かし受信トレイを開くと、そのメールは未登録者からのメールであった。誰からだろうと黒尾は首をかしげるが、ある一人の人物からの可能性が浮かび上がり、黒尾の中で期待が一瞬で高まる。逸る気持ちを抑えて決定キーを押す。
『件名:なし
本文:瀬戸です。メール届きましたか?返信お願いします』