第6章 手に手をとって
「や、その…家族以外の男の人の連絡先って、初めてなんで、その…」
無言の空間が私と黒尾さんの間を漂う。
烏野の皆の騒ぎの中に音駒の皆も参戦したのか、山本さんや夜久さん達の声が入り乱れている。その声が異様に大きく聞こえて耳に入ってくる。
何十分にも感じられたその時間は、黒尾さんの痛みに呻く悲鳴により切り裂かれた。
「痛いぃッ!」
突然上半身を反らせる黒尾さんにビクリと肩が撥ねる。
「ちょっとクロ、フリーズしないでよ。瀬戸困ってるでしょ」
「ちょ、ちょっと研磨くん…人の尻蹴っといて第一声がそれ…?」
「ていうか自分もフリーズしてんじゃん。瀬戸のこと馬鹿に出来ないじゃん。アホだね」
「ねえちょっとこの子辛辣!!!」
黒尾さんは悲鳴のように抗議をする。孤爪さんはズボンのポケットに両手を入れながらつーんとそっぽを向いている。孤爪さん超クール。
でも、どことなく黒尾さんも元気が出てきたみたいで安心した。やっぱりこの二人も信頼し合っているんだなと感じ、それを羨ましいとも感じる。浅ましい私の心根を嫌悪するが、今はそれを押さえ込み、冷静を取り繕う。
──────どこまでも惨めで卑屈で薄汚い私を知られないように。