第1章 瞳の先
西谷先輩は雷に打たれた様な衝撃を受けていた。ふらりと後ずさりをすると、口元に手を当ててぶつぶつと呟き始める。
「せ、せんぱ・・・・・・!い、いや!こんなんで俺は動かねぇし・・・・!!」
西谷先輩、なんか嬉しそうだ・・・。突然日向が『西谷先輩』と呼んだことと何か関係があるのだろうか。私はこそっと隣の日向に耳打ちする。
(日向)
(ん?)
(何で急に西谷先輩って呼んだの・・・?)
(あ、それはキャプテンが――――)
『あいつが戻ってきたら“先輩”って呼んでやれよ、日向』
(―――って言ってくれたの思い出したから!)
(なるほど・・・)
さすが主将。メンバーが喜びそうなこともしっかり理解してらっしゃる。やはりあなどれん・・・・・。と、一人で主将に恐れ戦いていると西谷先輩が声を上げる。
「とっ、とにかく!俺は戻らないからな!こんなことで喜んでねぇし!!」
喜んでいるようです。
だが西谷先輩は踵を返し、私達に背を向ける。どうやら意地が働いてしまったようだ。
「あっ!西谷先輩ッ!」
再度日向は『西谷先輩』と呼ぶ。足を止め、ほんの少しこちらに視線を寄こすが、先輩の中で意地が勝ったのか振り切るように歩き出してしまう。
日向は、う~・・・と子供の様にぐずった声を上げ、不意に私の肩を掴む。