第6章 手に手をとって
* * *
挨拶になり、各校の部員達は向かい合わせに一列になる。最初に皆が出会った時のようだなと感じ、少し胸が苦しくなる。脇に控えて号令を待っていると、不意に静かな声が通る。
「なあ、ちょっと待ってもらって良いか?」
そう言ったのは黒尾さんだった。その問いに、主将は疑問符を浮かべながらも承諾する。
「? ああ、構わないが」
「サンキュッ」
黒尾さんは笑みを浮かべると、私へと視線を投げ掛け、軽くて招きをする。
「瀬戸。ちょっと来い」
「は、はい…?」
「良いから早く」
その言葉の意図を掴めないまま、烏野と音駒の列の間を突き進み、中央へと移動する。音駒の皆と対峙する形で佇む。こ、こえーよ…。
私は何が何やら分からないのだが、主将は何か察したのか烏野の皆に少し下がるよう指示を飛ばした。それに乗じて何となく後ずさる。何となくだからね。何が起こるのか不安で恐いとかじゃないから。
不意にザッと音駒の皆が列を歪め、軽く弧を描く。唐突な事態に反射的に肩が撥ねる。今なんか指導組の皆さんってこんな感じなんだろうなって分かった気がする。何だ何だと身構えていると、黒尾さんがスッと息を吸う。
「挨拶ッ!!」
「「「「あスッ!!!」」」」
「今日一日、音駒のマネージャーをして頂きッ!!ありがとうございましたッ────!!」
「「「「ありがとうございましたッ──────!!」」」」
腰を折り礼をする皆に、ぽかんと口を開けてしまう。突然だったので心の準備が出来ていなかった事もあり戸惑いなうである。ど、どどどどうすればいい?何言えばグッドなのこれ。ていうか照れるんだけど私ちょっとどうしよう。混乱パーリーだよ。
「…?瀬戸?」
「……」
「瀬戸?おい?」
「……」
「瀬戸?」
「え、あ、は、はいッ!!」
「ブハッ!!こいつまたフリーズとかッ!!!ぶひゃひゃひゃひゃ!!」