第6章 手に手をとって
「か、げやまさ、」
「良いから」
「え……?」
問い返すと、影山さんは空いている右手で、私の左肩にそっと触れる。
「もう、分かったから。もう、泣けば良いから。好きなだけ、泣けば良い」
影山さんは僅かに目を細める。その表情に私は目を見開く。
その表情は、まるで泣き出しそうに見えたから。
先程の影山さんの言葉と、その表情に、私は再び瞳に涙を溜め始めてしまう。それでも必死に堪えていると、影山さんは私の右手を更に強く握り締め、口を開いた。
「お前が泣き止むまで、側にいるから」
私は俯き、嗚咽を噛み殺して泣いた。せめて、みっともない声を影山さんに聞かせないようにと最後の意地だった。それでも溢れ出た声を、影山さんは静かに聞いてくれた。
私がありがとう、ありがとうと呟くと、優しく肩を撫でてくれた。
私は泣いた。目が痛くなるまで泣いた。それでも泣いた。
きっと彼は、泣くまいと意地を張って我慢してる。不器用で、天邪鬼で、
────優しい影山さんの分まで、泣き続けた。