第6章 手に手をとって
「青葉城西との練習試合で、初めてあの速攻を見ました。あんなに凄い速攻、初めてでした。そして、その速攻を、日向が打っている。
凄く嬉しかったです。日向が高い身長の選手達にも負けない術を見つけたんだと思いました。そして、その練習試合をきっかけに、私はマネージャーとして入部しました。日向に聞いたとおり、みんな良い人達ばかりで、温かくて…。
私はこの人達の役に立ちたいと、すぐにそう思いました。日向も皆さんに囲まれて、輝いていて。でも、日向が輝いた一番の理由は、きっと影山さんです」
私は真っ直ぐに彼を見詰める。影山さんは面食らったように一歩後ずさる。
「な、何で…。俺別に何もしてな、」
「いいえ!影山さんはしてくれたじゃないですかッ!!」
私が声を張り上げたのと、その言葉に驚いたのか肩を撥ねさせた。私はぎりっとジャージを握る手を強める。
「影山さんは日向の持ってる力を見出してくれた、今まで燻っていた彼の力を…」
唇が再び覚束無くなる。ジャージを握る手が小刻みに震え始める。
「ひ、日向がずっと見たかった“頂”の景色を見させてくれたっ…!」
視界がじわりと歪み、霧が掛かったように上手く見えなくなる。影山さんが、今どんな表情なのかも不透明になる。
「そ、そして…あなたは…!」
震える唇を抉じ開け、息を吸って思い切り言葉を吐いた。
「日向の、“相棒”になってくれた……!」
影山さんは何も言わない。彼がどんな顔をしているかも分からない。なのに口は止まらない。