第6章 手に手をとって
「日向は他の人や私が一緒に練習出来ない時でも、一人でずっと、練習してて、一緒に戦ってくれる仲間が居なくても、ずっと一人で頑張っていて…。
でも、日向も、部活の時間めいっぱい一緒に練習してくれる仲間が、一緒に戦ってくれる仲間が欲しかったはずなんです。そのことを、分かってるのに、なのに、私は一緒には戦えなくて、一緒に戦う仲間にもなれなくて…。何も、出来なくて…それが、凄くもどかしくて、辛くて、苦しくてッ……」
ぎりぎりと奥歯を噛み締める。目から今にも溢れ出そうとするそれを必死に堪える。思い出すだけで苦しくてどうしようもない。しかし、泣けば上手く喋れなくなってしまう。私はちゃんと影山さんに伝えたかった。この気持ちを、ちゃんと。
「日向と影山さんが、初めて出会った、あの試合の時、日向は、自分より身長の高い選手達に止められて、打ちのめされて、凄く悔しくて仕方なかったと思います…。
私も、見ていてとても悔しかったです。今までの、日向の努力を知っているから、なおさら悔しかったです。そして、中学を卒業して、日向と一緒に烏野に入学しました。
登下校の時とかに、みなさんのことを聞かせてもらいました。
中学の時と違って、凄く楽しそうで、『おれでも戦えそうなんだ!』と話してくれて、とても安心して、私も嬉しかったです。でも…」
「でも……?」
影山さんは鸚鵡返しに問い掛ける。私は腕から手を離し、右手でジャージの胸元をきつく握り締めた。
「一番嬉しかったのは、あなたが、影山さんが居てくれたことです」
「!!」
影山さんは目を見開いた。その顔は驚愕に満ち、パクパクと口を開閉させている。私はそれを尻目に先を続ける。