第6章 手に手をとって
「で、何で二人を取り持ったの」
「……」
黒尾は考え込むように押し黙った。その表情は先程までの緩んだ雰囲気とは違う空気を纏っている。研磨は黙って手元の画面に指を走らせ、言葉を待った。
「俺じゃ、ダメだと思ったんだよ」
研磨は手をピタリと止め、黒尾の顔へ視線を動かした。
「初めて会ったのはほんの少し前で、瀬戸の中身をちゃんと知ったのは今日。それなのに、アイツの事を知ったつもりでいる自分がいた。でもそれは当然大きな間違いで…。アイツは、一分一秒違う姿を見せてきた。それを見て、最初は、『何だコイツ本当面白いな』とか思ったけど、でも…その姿の中に、すげぇ悲しそうな顔した瀬戸が居た。それ見て、思ったんだ」
黒尾はピタリと言葉を止め、自分の手元を見詰める。
「───────あー、俺じゃダメだわ、って」
その言った黒尾の顔は、泣き出しそうに笑みを湛えていた。
「何だよこれって思った。俺じゃ支えてやれないって、一瞬でそう思うくらい辛そうな顔だった。何抱えてんだって思った。聞いてやりたいって思ったけど、俺が何をしてやれるんだろって思って」
自身の手を見続け、黒尾は一息に吐き出した。その瞳は今にも溢れ出しそうに潤んでいる。研磨は何も言わず、只一心に黒尾を見守り続ける。まだ、言いたいことがあるのだろうと。
「んで気付いた。瀬戸を支えてやれる奴。最初はあのチビちゃんかと思った。瀬戸が試合中よく話してたしな。でもアイツの目をよく見たら、違うって気付いた。
アイツの目の先には─────あのセッターくんが居たんだ」