第6章 手に手をとって
※ ※
「で、何で二人を取り持ったワケ…?」
「ん?何のことデスカー?」
いーっと伸びをしながらその場から離れる黒尾に対し、研磨はジトッと目を細める。そんな研磨の表情に、黒尾は困惑を交えた笑みを浮かべる。
「そんなこえー顔すんなってー。俺何か悪い事したかー?」
皆から離れた浅瀬の方へ二人は移動してきた。頬を掻きながら問い掛ける黒尾を研磨は一瞥する。すぐにスマートフォンへ目を戻し、操作へと戻る。
淡々とした作業の最中、研磨は緩やかに言葉を紡ぎ始める。
「はぐらかしてるからじゃん。俺に対して、そんで…
─────────自分に対しても」
黒尾は目を見開く。何か発しようと口を開閉させるが、「は、えっ?何いって、」と意味を孕まない言葉が漏れ出すだけである。
そんな黒尾を、猫に似た鋭い研磨の瞳が縫い止める。
無表情で口元を真一文字に引き締め、まるで生気を感じさせないが、その瞳だけが意思を持ったように見詰め続けている。見慣れた筈のその研磨の表情に対し、黒尾はビクッと怯えを見せる。その反応に、呆れたように研磨は溜息をつく。
「俺を騙せない事、クロが一番よく知ってるでしょ?何で嘘吐くのさ。ていうか隠したって今更でしょ。俺にとっては、分かりやす過ぎだよ」
「ううっ、スンマセン……」
黒尾は肩を竦めて謝罪をする。研磨に対し隠し事をした事の罪悪感と、真意を見抜かれていた事の気恥ずかしさが如実に現れている。研磨は再度溜息をつく。