第6章 手に手をとって
* * *
「音駒の面子もすっかり眼鏡のマネちゃんに馴染んでんな~」
「潔子先輩ですから」
黒尾さんと並び、目の前の光景について感想を述べる。
現在ビーチバレーならぬリバーバレー(私命名)に参加しているのは、烏野メンバー数名、音駒メンバー数名、潔子先輩である。ボールを落とさないように繫げていくという形式なのだが、やっぱりこれはどこでも盛り上がるよね。男子の面々の中だが潔子先輩も楽しそうだ。良かった良かった。
「やっぱ眼鏡のマネちゃん美人だなぁ~」
「…潔子先輩に手出したら只じゃ済みませんからね」
主に私によってな。黒尾さんは苦笑すると、軽く両手を上げて降参ポーズを取る。
「そんな釘刺さなくても手ぇ出さねぇって。安心しろ」
「ホントですか…?」
「おおっとその目は信用してねぇな~〜」
「信用してますよ、2割くらいは」
「少ない!」
2割信用しただけでも大した進歩でーす。内心呟いておきリバーバレーに向き直る。お、80回目突入だ。
「つーかよー、お前さっきまで笑ってたのにまた無表情に戻ったのな」
「……何かダメですか」
「ダメですねぇ」
何でじゃい。横目に黒尾さんを見ると、黒尾さんはニッと笑みを浮かべている。余裕たっぷりって感じ。腹立つわー。
「何がダメなんですか…」
「もっと笑おうぜー?眼鏡のマネちゃんの前だけじゃなくてさー」
黒尾さんの意見は至極もっともだ。こんな愛想悪いままじゃいけない事は自分が一番分かっている。ちゃんと、分かっている。