第6章 手に手をとって
* * *
「オラオラオラァッ!!余所見してっと危ねぇぞー!!」
「はぴぃッ!!」
タブルゾーン…とか続いてみる。
目の前の夜久さんは突然の攻撃を喰らい、奇妙な悲鳴を上げて川へと背中からぶっ倒れていく。
「ぶっひゃひゃひゃッ!!ざまぁ~~!!」
マシンガン水鉄砲を手に腹を抱えて爆笑する黒尾さんに、思わず私は身震いする。お~こわ~…いや黒尾さんじゃなくて夜久さんの報復が。
「く~~ろ~~お~~……!!」
ゆらりと夜久さんの上半身が水面から起き上がってきた。夜久さんは片手で乱暴に顔を拭うと、バシャリと緩慢に立ち上がる。
「おおう?何の武器も無いお前に一体何が出来るのかな~?」
「武器ならあるぞ…」
「?」
夜久さんは流れる様な動作で腰を折り、水に両手を沈める。黒尾さんは不思議そうに小首を傾げ、その意図を理解出来ないようだ。夜久さんはニヤリと笑みを浮かべると大きく腕を振り水を掻いた。
「両手という武器がなぁッ!!!」
―――――――バシャアアアアアアッ!!!
「あ゛あ゛ああああスンマセンしたああああああッ!!」
「待てコラ逃げんな馬鹿黒尾おおおおおお!!!」
ほら、怒らせると怖い。水引っ掛けられまくってる黒尾さんに内心苦笑しつつその光景を見詰める。と、何故みんな身体を濡らしても良いのかと言うと、ジョーのような状態になってしまった鳥養コーチの代わりに、猫又監督から出た決まりである、『必ず身体を拭き、濡れた服を着替え、髪の毛もしっかり拭く』を遵守する事が条件として、身体を濡らしても良いとなったのだ。猫又監督寛大だぜ。ちなみにバスの運転手さんの粋な計らいとして、水鉄砲やビーチバレーのボールなども貸し出しで貰ったのだ。イケメーン。