第1章 瞳の先
日向に手を引かれ、気付けば体育館から出ていた。口を挟む暇も無くなされるがまま一緒に走っている。さすがに連れられた意図を理解出来ないので、日向に声を掛けた。
「ちょちょっとっ・・・!一体どうしたの!何で急に・・・!」
日向は軽くこちらを振り返り、荒い息を吐いて口を開く。
「ごめん瀬戸っ!ちょっと引き留めるの手伝ってほしいんだっ!」
「にっ、西谷先輩っ?」
「うんっ!」
日向はニッと無邪気な笑顔を見せる。すぐに前へと向き直り、再びふわふわと上下する髪の後ろ頭を私は見詰める。・・・ところで私息上がるの早くなった気がする。てかちょっと早すぎる。また体力付けねば・・・・・。
「あっ!」
「!」
前方に黒い学ランを纏った後ろ姿を見つける。すると日向はその背中に向かって声を飛ばす。
「レシーブ教えてくださいっ!!」
私は思わず目を見開いた。激おこ状態の西谷先輩に教えてもらうだなんて私には出来ない、絶対に。そんなことしたら確実に私は骨粗鬆症みたに震えが止まらんくなる。ていうかこれ西谷先輩怒るよこれ。
日向の声に先輩はピタリと止まった。少しこちらに顔を向けた。先輩の眉根は僅かに寄っていて不機嫌そうだった。私はあわあわと先輩と日向を交互に見てしまう。ちょっと日向、西谷先輩おこだよドウスルノ(菩薩顔)どこか不機嫌そうな先輩とは対照的に、日向は嬉しそうに頬を紅潮させていた。弾ませた声が飛び出す。
「ニシヤさんリベロですよね!守備専門の・・・」
「ニシノヤだ」
日向さんマジパネェっす。あ・・・・何だろう目が霞んでよく見えないや・・・・・。