第5章 猫は鴉へ爪を突き刺す
「俺が、音駒の主将と、何喋ってたんだって、聞いた時…」
「あっ……」
記憶の端を突付かれ、私が知る限りでの最強ガチおこ頂点だった影山さんを思い出す。アレコワカッタマジデ…。
「その、あの時俺、何つーかその…すげえ何か、もやもやしてて、それで、ちゃんと見てなくて、お前が怖がってたの気付けなかった。そんで、嫌な思いさせた。俺、その、ホント…悪かった…」
言い終わる頃には影山さんの頭は完全に下がり、彼がどんな表情をしているのか視認する事は出来なかった。しかし、きっと今影山さんは悲しみに満ちた表情をしているのだろう。何故なら、先程の彼の言葉は────今にも消え入りそうだったから。
「ありがとうございます、影山さん」
「え…?」
影山さんはぽかんとした顔へと変わる。私はその顔を静かに見詰め返す。
「ちゃんと謝ってくれて、ありがとうございます。やっぱり、人に謝るって、凄く緊張することです。だから、逃げたりとかしたくなるものだと思うんです。あ、いえ、私がそう思ってるだけかもしれないですけど…。だから、その、ちゃんと謝ってくれて、嬉しいです、ありがとうございます…」
「おっ、俺も、ありがと…」
二人揃って顔が赤くなる。何ていうか照れる。凄く照れる。が、もう一つ照れる根源を再確認してしまう。
「あ、あの、影山さん…」
「? 何だ?」
「手、繋いだままです……」
「ッ!!!」
ホントにもうオーバーヒートしそう。