第5章 猫は鴉へ爪を突き刺す
「瀬戸ッ────!!大丈夫かッ────!!」
「西谷先輩!」
ガルルルと吠えるようにして飛んで来た西谷先輩は、車のスリップ音をさせ、目の前で急停止をする。すげぇよ先輩。
「うおおぉぉい!!さっきから見てれば何口説こうとしとんじゃい!!事務所通せっつったぞ!!」
「えーちょっと何なのこの人噛み付かれそうッ!」
いや、“そう”ではなく噛み付きにかかってますね。
「ええい野郎共!!出合えっ!!出合ええええええええええええええ!!」
「どうしたノヤッさん!!」
「ノヤさんどうしたんですか?!」
ちょっと待ってカオス間違い無しなんですけど。来ちゃったよ田中先輩に日向という風雲児達が。
「あああああああああああ!!トサカヘッドの人ッ!!また瀬戸と……!!!」
「何ぃッまただとぉッ!!??」
「ノヤっさんマジやっちゃいましょうぜ!!」
「ちょっ、俺何されんのちょっとぉッ!!」
「……とりあえず辞世の句は聞いておきますよ」
「それヤバイやつだからね!!!」
こんな状況下でもツッコミの鋭い黒尾さん。あなたの事は忘れません明日までは。
「おーし良いぞーやったれ三人ともー」
「おーい田中ー。あっちに手頃なバールのような物あるけどいるべー?」
「ちょっとそこのお二人煽るのやめて!!ていうか助けて!!」
黒尾さんから悲鳴のようなツッコミが上がる。もう腹括るしかないですよ。遠い目をして傍観していると、くんっと右腕に引っ張る力が加わる。
「えっ、わっ」
「ん、お?」