第5章 猫は鴉へ爪を突き刺す
「片付け結構を終わっちゃってるね~。あ、パイプ椅子まだあるからそれ片付けようか」
「はい。あ、私音駒側の方の椅子片付けますね」
「うん、よろしくね」
小走りで音駒側のコートに監督と芝山さんが使用していた3つのパイプ椅子が鎮座していた。ちなみに私はパイプ椅子の使用を遠慮させてもらった。何となく申し訳なく、芝山さんにどうぞと薦められたが遠慮してしまった。その結果第2試合目の時には脚は疲労困憊状態ですよ。試合終了10分前の自分は、最早意地と根性で立っていたからネ。
「よいしょっ」
パイプ椅子を折り畳み、それを両脇にそれぞれ抱えて歩き出す。
……うん、何かチラチラ視線が突き刺さる。主に烏野の皆様から。痛い。凄く痛いです。後悔と羞恥により足取りは重くなる。くそうパイプ椅子も結構重いのに心も重いよう。
「わっしょーい」
「へっ?あっ」
軽快な掛け声と共に左の手から重みが消える。反射的に左へ目をやると、そこには軽快な掛け声に似つかわしい人が居た。
「黒尾さん…!」
「ヘイ彼女ー。重そうだから手伝っちゃうよー」
ユニフォームの上にジャージの上着を纏った黒尾さんがニヒッと笑みを浮かべてる。あ、その長袖ジャージに短パンな感じの組み合わせ好きなんだよね。って何の話だよ私。
「い、良いですよ。パイプ椅子3つぐらい運べますから」
「良いって良いって。遠慮すんな」
そう言いながら黒尾さんは2つのパイプ椅子を運び始める。
「で、でも黒尾さんも疲れてますし、」
「それ言うならお前も疲れてんだろ。良いから黒尾さんと用具室までお片付けデートしちゃおうぜ~」
「な、デッ…?!」