第5章 猫は鴉へ爪を突き刺す
* * *
「すみません潔子先輩、手伝ってもらっちゃって」
「これくらい全然良いよ。私がしたくてしたことなんだし!」
そんなお茶目な笑顔を見せてくれる潔子先輩により再び天に召されそうになったのは私ですハイ。
潔子先輩と共に体育館へと戻りながら談笑を交える。ああ私のオアシス潔子先輩。今日は潔子先輩足りなかったからここで補給だぜ。まあさっきの潔子先輩のデレで潤いまくってるんですけどね。
体育館の扉は開け放たれており、その先では皆は忙しなく動いているのが伺えた。
「あと片付けすることあるかな?」
「あーどうですかねー。まだ何かあるかも、」
体育館へ足を踏み入れながら返した言葉は中途半端に停止する。それと同時に冷や汗がぶわっと噴き出してきた。理由は単純明快。
皆の瞳が一斉にこちらに向かってきたからである。
「え、な、何っ?何急に…」
突飛な状況に潔子先輩は呆気に取られ、目を彷徨わせている。そうか、潔子先輩はあの時もうボトルの片付けしてて居なかったのか。いや全然その方が良いんですけどね。でも何て説明すりゃ良いんだろうか。
「さ、さぁ~~…何でしょうかね~急に……」
打開策を練ろうとしたが焦りで思考は鈍り、妥協して白を切ることにした。改めて自分のした事を悔やみ始める。覆水盆に返らず。後の祭り。悲しい。
皆は意識を取り戻したようにハッとした表情を浮かべると、再び動きを再開する。
「な、何だったのさっきの…」
「さぁ~~…」
潔子先輩には申し訳ないが白を切り通す。ごめんなさいです。